建築ライフサイクルアセスメントとは

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BIMを含めたライフサイクルアセスメント、建築分野での実践について

建築ライフサイクルアセスメントとは

image: momo-Archi

建築分野でのライフサイクルアセスメントの導入を任されたものの、具体的な進め方がわからず悩んでいる実務者は少なくありません。特に、理論と現場での実践にはさまざまなギャップがあり、多くの方が戸惑いを感じているのが現状です。

建築物のライフサイクルアセスメントは、環境配慮設計の必須ツールとして注目を集めていますが、実務での取り組みはまだ発展途上といえます。本記事では、現場の実情に即した実践的なアプローチと、最新の動向を踏まえた具体的な導入方法をご紹介します。

このページでは次の情報をお伝えしています

記事のポイント

  • LCAの基本的な仕組みと建築分野での具体的な評価範囲
  • BIMと連携した効率的な算定方法と実務での活用ポイント
  • 現場で直面する課題とその具体的な解決策
  • 今後の法規制動向と実務者に求められるスキル

建築分野でのライフサイクルアセスメントについて、基礎から実践まで体系的に理解したい方、効率的な実務への導入方法を探している方に向けて、現場で実際に使える知識と手法を詳しく解説していきます。

建築分野でライフサイクルアセスメントを実践する現場の実態

建築ライフサイクルアセスメントとは

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  • LCAの基本的な仕組み
  • 建築物の評価範囲
  • 具体的な算定方法
  • 現場での課題と対応策
  • BIMとの連携効果
  • 評価ツールの選び方
  • 成功事例のポイント

LCAの基本的な仕組み

ライフサイクルアセスメント(LCA)は、建築物が環境に与える影響を、数値で「見える化」する手法です。

実は最初、多くの実務者はこれを単なる環境評価の手間として捉えがちでした。しかし、カーボンニュートラルへの関心が高まる中で、その重要性は大きく変化しています。具体的には、建物の設計から建設、使用、解体までの全過程で発生するCO2排出量や資源消費量を計算します。

たとえば、建材の製造時に発生するCO2、工事現場での重機の稼働によるCO2、建物の空調や照明による電力消費、さらには解体時の廃棄物処理まで、すべての環境負荷を対象とします。正直なところ、これだけの範囲を扱うのは簡単ではありません。

しかし、近年ではBIMと連携したツールや、標準化された計算手法が整備され、実務での活用のハードルは確実に下がってきています。

建築物の評価範囲

建築物のLCAで評価する範囲は、国際規格によって明確に定められています。具体的には「製品段階」「建設段階」「使用段階」「廃棄段階」の4つに大きく分類されます。

ここで注目したいのは、それぞれの段階でどのような項目を評価するかは、プロジェクトの目的によって柔軟に設定できる点です。

たとえば、建材のCO2排出量だけを評価したい場合は「製品段階」に焦点を当て、建物の省エネ性能を重視する場合は「使用段階」を詳しく分析します。予想以上に重要なのが「使用段階」で、建物の寿命を60年と想定した場合、全体の環境負荷の約7割がこの段階で発生するとされています。

また、最近では「建設段階」での仮設材料の再利用や、「廃棄段階」での資材リサイクルなど、これまであまり注目されていなかった部分にも関心が集まっています。

具体的な算定方法

建築物のLCA算定は、一見複雑に思えますが、基本的な流れは「数量×原単位」という単純な掛け算の積み重ねです。

たとえば、コンクリート1立方メートルあたりのCO2排出量(原単位)に、建物で使用する総量を掛けるという具合です。

ここで重要なのは、精緻な計算よりも、まず全体像を把握することです。実務では、日本建築学会が提供するLCAツールや、各社が開発した専用ソフトを活用するのが一般的です。予想以上に便利なのが、BIMと連携したツールで、建物の形状データから自動的に数量を拾い出せます。

また、計算の精度は企画段階から実施設計段階に進むにつれて高めていけばよく、最初から完璧を目指す必要はありません。

ただし、気をつけたいのは使用する原単位データの選定です。同じ建材でもメーカーによって環境負荷が異なるため、適切なデータを選ぶことが重要になります。

現場での課題と対応策

建築現場でLCAを実践する際、最も多く聞かれる悩みが「人手と時間の不足」です。

確かに、従来の手法では膨大なデータ入力と計算作業が必要でした。しかし、この課題に対して、現場では様々な工夫が生まれています。

たとえば、見積書データを直接LCAソフトに取り込む、BIMデータから数量を自動算出する、といった効率化の取り組みです。

さらに注目したいのが、算定の優先順位付けです。建物の環境負荷の大部分は、構造材料や設備機器など、比較的少数の主要項目で決まります。そこで、まずはこれらの重要項目に焦点を当て、詳細な項目は段階的に追加していく方法が効果的です。

ただし、ここで気をつけたいのが、あまりに簡略化しすぎると信頼性のある結果が得られない点です。現場の実情に合わせて、適切なバランスを見つけることが重要になります。

BIMとの連携効果

BIMとLCAの連携は、建築物の環境評価を大きく変えつつあります。従来、LCA評価には膨大な手作業が必要でしたが、BIMを活用することで作業時間を驚くほど短縮できます。

具体的には、BIMモデルから建材の数量や仕様を自動的に抽出し、LCA評価に必要なデータとして活用できるのです。たとえば、前田建設工業が開発した「CO2-Scope」では、従来1ヶ月程度かかっていた算定作業が最短1日程度まで短縮可能になりました。

また、設計段階での環境負荷の予測も容易になり、より環境に配慮した材料や工法の選択ができるようになっています。

ただし、注意したいのは、BIMモデルの作り込み方によって算定精度が大きく変わる点です。特に初期の段階では、概算に必要な主要な部材のモデリングに焦点を当て、詳細は段階的に追加していくアプローチが効果的です。

評価ツールの選び方

LCA評価ツールの選定は、実務での活用を左右する重要な決断です。最近では、様々なツールが登場していますが、それぞれに特徴があり、目的に応じた選択が必要です。特に注目したいのは、「使いやすさ」と「データの信頼性」のバランスです。

建築ライフサイクルアセスメントとは

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たとえば、日本建築学会のLCAツールは信頼性が高く、多くの実績がありますが、操作にある程度の習熟が必要です。一方、最近登場した民間のツールは、直感的な操作性を重視していますが、データベースの範囲に制限がある場合もあります。予算と相談しながら、自社の実情に合ったツールを選ぶことが重要です。

また意外と重要なのが、アフターサポートの充実度です。実務で使い始めると、様々な疑問や課題が出てきますので、サポート体制が整っているかどうかも、選定の重要なポイントとなります。

成功事例のポイント

建築分野でのLCA導入に成功している事例には、いくつかの共通点があります。

特に注目したいのは、段階的な導入アプローチです。たとえば、

ある大手デベロッパーでは、最初は環境負荷の大きい構造材料だけを評価対象とし、徐々に範囲を広げていきました。また、設計事務所の成功例では、BIMと連携させることで、設計の初期段階から環境負荷を「見える化」し、クライアントとの合意形成を円滑に進めています。

驚くべきことに、LCAを導入した企業の多くが、予想外のメリットを報告しています。たとえば、コスト削減や工期短縮といった副次的な効果が得られたケースも少なくありません。ただし、成功の鍵となるのは、経営層の理解と現場スタッフの協力体制です。

形だけの導入ではなく、組織全体で環境配慮設計に取り組む姿勢が重要だと言えます。

ライフサイクルアセスメント建築における最新動向と将来展望

建築ライフサイクルアセスメントとは

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  • 国内外の評価基準
  • 脱炭素化への貢献
  • 実務者に求められる知識
  • 発注者の評価ポイント
  • 今後の法規制動向
  • 期待される活用シーン
  • 総括:ライフサイクルアセスメント 建築で環境配慮の時代へ

国内外の評価基準

LCAの評価基準は、国内外で急速に整備が進んでいます。日本では、日本建築学会が定めた「建物のLCA指針」が長らく標準とされてきましたが、最近では国際基準との整合性も重視されています。

特に注目すべきは、ISO21930やEN15978といった国際規格への対応です。これらの基準は、建物のライフサイクル全体を「製品段階」「建設段階」「使用段階」「廃棄段階」に分類し、各段階での環境負荷を統一的に評価します。

実は、こうした国際基準への対応は、日本企業にとって新たな課題となっています。しかし、この動きは避けては通れず、むしろビジネスチャンスとも言えます。特に興味深いのは、欧米での取り組みです。例えば、フランスでは建築物のLCA評価が法制化され、新たな市場が生まれています。

脱炭素化への貢献

建築物のLCAは、脱炭素化への具体的な道筋を示す重要なツールとして注目を集めています。実は、建築分野は日本のCO2排出量の約3分の1を占めており、その削減は避けては通れない課題となっています。

LCAを活用することで、建物のライフサイクル全体でのCO2排出量が「見える化」され、効果的な削減策を見出すことができます。たとえば、低炭素コンクリートの採用や、省エネ設備の導入による削減効果を、具体的な数値で示すことが可能です。

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特に興味深いのは、設計段階での比較検討です。同じ建物でも、材料や工法の選択によってCO2排出量が大きく変わることが、数値で明確になります。

ただし、注意したいのは、単なる数値の追求ではなく、建物の品質や居住性とのバランスです。実務では、これらの要素を総合的に判断しながら、最適な解決策を見出していく必要があります。

実務者に求められる知識

建築LCAの実務者には、従来の設計・施工の知識に加えて、新たなスキルが求められています。最も基本となるのは、LCAの計算方法と評価基準の理解です。

とはいえ、最初から完璧を目指す必要はありません。まずは概算レベルでの評価から始め、徐々にスキルを高めていくアプローチが現実的です。

驚くべきことに、多くの実務者は予想以上に早くLCAの基本を習得しています。特に重要なのは、BIMツールの操作スキルです。最近のLCA評価は、BIMと連携することで効率化が図られているためです。

また、意外と重要なのがプレゼンテーション能力です。環境性能の評価結果を、発注者や関係者にわかりやすく説明し、合意形成を図る必要があるためです。

ただし、これらのスキルは一朝一夕には身につきません。継続的な学習と実践が重要になります。

発注者の評価ポイント

建築物のLCA評価において、発注者の視点はますます重要になっています。特に注目すべきは、環境配慮が企業価値に直結する時代になってきた点です。

実は、多くの発注者が建物のライフサイクルCO2排出量を、企業のESG評価や環境報告書に活用し始めています。たとえば、不動産協会の会員企業では、建設時のCO2排出量を統一した手法で算定し、自社の環境目標達成に向けた指標として活用しています。

予想以上に重要なのが、コストとの関係性です。環境配慮型の建材や設備は、初期投資が増える傾向にありますが、運用段階でのエネルギーコスト削減や、将来的な規制対応を見据えた投資として捉える発注者が増えています。

ただし、気をつけたいのは、単なる数値の追求ではなく、建物の基本性能とのバランスです。発注者との対話を通じて、最適な解決策を見出していく姿勢が重要です。

今後の法規制動向

建築分野のLCAを取り巻く法規制は、大きな転換期を迎えています。特に注目すべきは、2025年4月に施行される改正建築物省エネ法です。

この法改正により、これまで努力義務だった省エネ基準への適合が、原則としてすべての新築建築物で義務化されます。

さらに興味深いのは、欧米の動向です。例えばフランスでは、建築物のライフサイクルでの環境影響評価が既に法制化されており、同様の規制が他の国々にも広がりつつあります。日本でも、TCFDなどの国際的な枠組みへの対応から、建築物のライフサイクルCO2排出量の開示要求が強まっています。

ただし、急激な規制強化は現場に混乱をもたらす可能性もあります。そのため、段階的な導入と実務者への支援体制の整備が同時に進められています。今後は、より具体的な基準や評価方法の整備が進むと予想されます。

期待される活用シーン

建築物のLCAは、実務の様々な場面での活用が期待されています。例えば、設計段階では、異なる材料や工法の環境負荷を比較検討する際の判断材料として活用できます。

予想以上に効果的なのが、クライアントとの打ち合わせです。環境負荷を具体的な数値で示すことで、環境配慮型の提案がより説得力を持つようになります。

施工段階では、CO2排出量の少ない建材の選定や、工事での環境負荷低減に向けた指標として役立ちます。

さらに、竣工後の運用段階でも、省エネ効果の検証や、改修計画の立案に活用できます。加えて注目したいのが、企業のESG評価への活用です。

POINT

建物のライフサイクルでの環境負荷を定量的に示すことで、企業の環境への取り組みを具体的にアピールすることが可能になります。ただし、各場面での活用には、それぞれに適した評価方法の選択が重要です。

総括:ライフサイクルアセスメント 建築で環境配慮の時代へ

最後に、今回の記事内容をまとめます。

  • 建築LCAは建物の環境負荷を数値化する手法
  • 設計から解体まで全過程のCO2排出量を計算
  • 建物の環境負荷の約7割は使用段階で発生
  • 「数量×原単位」の掛け算で環境負荷を算出
  • BIMとの連携で作業時間を大幅に短縮可能
  • 初期段階は主要部材のみの概算から開始
  • 構造材料や設備機器が環境負荷の大部分を占める
  • 段階的な導入アプローチが成功のポイント
  • 経営層の理解と現場スタッフの協力が不可欠
  • ISO21930やEN15978などの国際規格に対応が進む
  • 2025年4月の改正建築物省エネ法で基準適合が義務化
  • 低炭素コンクリートや省エネ設備で削減効果を確認可能
  • BIMツールの操作スキルが実務者には重要
  • ESG評価や環境報告書での活用が増加
  • 設計・施工・運用の各段階で活用シーンが存在
  • コスト増は将来的な規制対応への投資として評価
  • 欧米では環境影響評価の法制化が進展
  • 建材メーカーによって環境負荷が異なるため適切な選択が必要

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